【八千代市】家族の「記録」が問いかけるもの。映画「どうすればよかったか?」上映会&トークセッション・レポート
2026年3月6日、精神障害を抱えた家族とその傍らにあり続けた人々の ドキュメンタリー映画「どうすればよかったか?」の上映会と、作品が投げかける問いを深めるトークセッションが開催されました。主催は「八千代市における精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築会議」。

主催者の予想を遥かに上回る申し込みで、満員となった八千代市勝田台文化センター。当日は秀明大学看護学部の学生も手伝いに来ていました。

「病気の人を撮る」のではなく、「受け入れがたい現実に直面した人間(家族)が、どう反応し、生きたか」の記録。そこには、私たちが暮らす地域の中で、共に生きていくための大切なヒントが隠されていました。

この作品の大きな特徴は、劇的な音楽による演出が一切ないことです。1992年の音声記録に始まり、2001年から20年以上にわたって撮り続けられた家族の姿が、ありのままに綴られています。過度な情緒に流されることなく「事実」を提示する編集方針は、観る人一人ひとりに「自分ならどうするか」を問いかけます。

トークセッションでは監督の藤野氏と医療・看護の専門家による、医療と家族の関わりについても深い議論が交わされました。ある時期を境に、この家族への適切な医療介入によって表情が和らぎ、日常の動作が回復していく様子が記録されています。一方で、精神科医療への不安や恐れから、本来もっと早く受けられたはずの治療に繋がるまで、長い年月を要してしまった背景も明かされました。

「あの時、どうすればよかったのか」。その葛藤は、決してこの家族だけのものではありません。家族が孤立せず、地域や医療がもっと早く、そして優しく手を差し伸べるにはどうすればいいのか。専門家を交え、未来に向けた具体的な支援のあり方が語られました。

監督が、家族との関係を維持するために最も大切にしていたこと。それは、特別な治療の話ではなく、日常の「会話」だったといいます。
「お姉ちゃん、何か僕に質問して。なんでもいいよ。何か聞きたいことない?」
「僕がこんなこと言うのもなんだけどさ。僕、お姉ちゃんの話相手になるよ。」
たとえ反応が乏しい時期であっても、本人の関心事に寄り添い、何気ない会話を組み立てる。その積み重ねが、家族としての繋がりを守る細い糸となりました。

「異常」という言葉で線を引くのではなく、一人の人間として向き合い、共感することの大切さ。その原点は、私たちの日常の会話の中にあります。この映画は、観て終わりではありません。上映後に全国各地で「対話の場」を設けることで、当事者、家族、そして医療・看護の現場を繋ぐ新しいネットワークが生まれつつあります。

父が残した「失敗ではなかった」という言葉の解釈など、観る人によって受け取り方が異なる多義的なメッセージも、この作品の魅力です。正解のない問いだからこそ、みんなで語り合う。そこから、地域で支え合うための本当の意味での「安心」が育まれていくのかもしれません。
- 住所
- 八千代市勝田台2丁目5−1






